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心を打つ短い物語や詩がたくさん入っている本です

この章で僕が特に心を打たれた物語を紹介します

 

追憶

 

ある教師が小学3年生の34人を教えていた。

その中で特に記憶に焼き付いている生徒がいる

 

その子はひどくおしゃべりで、

「授業中に勝手にしゃべってはいけません」

と一日に何回も注意しなければならなかった

 

でも驚いたのが、

叱られたときのその子の態度だった。

いつも真面目な顔になってこう言うのだった。

「先生、注意してくれてありがとうございます。」

 

ある日おしゃべりがあまりに酷いので、

ついに我慢できなくなり、

教師があまり言うべきではないことを言ってしまった。

「その忙しい口にテープを貼ってしまいますよ。」

 

すると10秒もたたないうちに、

他の生徒がその子がしゃべったと告げ口した。

みんなの前で罰を与えると言ってしまったのでそうするほかない。

粘着テープを取り出しその子の口にバツ印をつけた。

するとその子はウィンクしてくるではないか!

思わず笑いだしてしまった私は、

彼の机まで戻りテープをはがした

すると開口一番彼は、

「先生、注意してくれてありがとうございました」

 

その年の終わりに教師は中学部に移った

何年かして中学3年になったその子を再び教えることとなる

さすがに授業をしっかりと聞くようになり、

昔のようなおしゃべりは姿を消していた

 

ある日数学を教えていると、

新しい学習に生徒たちが手こずっていた

生徒たちがイライラしお互いにとげとげしくなっていった

そこで教師は授業を続けつことをやめ、

一息いれることにした

 

そこで二枚の祇に自分以外のクラスメート全員の名前を少し間をおいて書くように指示し、

一人ひとりの友達について、

その人の持っているいいところを考えて書き込むいくように言った

 

翌日教師は一人一人の子どもについて他のクラスメートが書いたことを整理した

 

そのリストをそれぞれの生徒たちに渡した

もらったリストを読み上げると、

子どもたちの顔に笑みが広がった

そしてあちこちからこんな声があがった

 

「ほんと!?こんなこと書いてもらえるなんて信じられないわ!」

「へぇーっ、僕のあんなところがいいって言ってくれるのか!」

「僕って、結構好かれてたんだな!」

 

まもなく生徒たちはリストのことを話題にしなくなった

でもそんなことはどうでもいいことだった

でもみんなに元気になり、

心の平静を取り戻せたのだから

 

生徒たちは私の元から飛び立っていった

 

ある日休暇からもどると両親の態度が不自然だった

その子がベトナムで戦死したと言う

葬式は明日でその教師にも出席して欲しいと言われた

 

葬式が終わりクラスメートは会食のために集まった

その子の両親が教師に見せたいものがあると言う

「その子が死んだ時、身につけていたものがあります。先生ならこれが何かおわかりになると思います。」

そして財布から二つ折りになった祇を、

破れないように丁寧に取り出した

昔、

クラスメート全員がいいところを書き、教師が整理したリストだった。

何度も何度も読んだのだろう

破れそうになったところを何箇所もテープでつなぎ合わせてあった

その子の母親は、

「先生、ありがとうございます。ご覧のとおり、これを宝物にしていたんです。」

 

教え子たちが教師のまわりに集まってきた

「先生、僕、例のリストまだ大事にとっているんですよ。机の一番上の引き出しに入れています。」

「私達も結婚記念アルバムに入れています」

「私もやっぱり持っていますよ、先生」

「私も肌身離さず持ち歩いています。あのリストは、みんなにとってそれだけ大事なものだったんです」

 

教師はその言葉を聞いたとき泣いた。

涙はとめどなく流れ続けた

 

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